Web制作プロジェクトの炎上を防ぐため、20年の実績から見た典型的な失敗パターンと具体的な予防策をご紹介します。
こんな悩みはありませんか?
「Web制作を依頼したけれど、気がついたら予算が倍になっていた」 「納期が延び延びになって、ローンチ予定が大幅に遅れた」 「完成したサイトが思っていたものと全く違う」
横浜でWeb制作を20年以上手がけてきた当社では、こうした「プロジェクト炎上」の相談を数多く受けてきました。実は、炎上するプロジェクトには共通するパターンがあります。
今回は、実際の案件で経験した失敗例を元に、Web制作プロジェクトが炎上する理由と、その予防策について詳しく解説します。
Web制作プロジェクトが炎上する5つの典型パターン
パターン1:曖昧な要件定義で進行
あるクライアントからECサイト制作の依頼を受けた際、「とにかく売れるサイトを作ってほしい」という漠然とした要望だけでスタートしたことがありました。
何が起こったか
- 開発途中で「やっぱり会員システムも必要」
- 「決済方法をもっと増やしたい」
- 「商品管理画面も作り込んでほしい」
結果、当初の見積もりから工数が3倍に膨らみ、クライアントとの関係も悪化してしまいました。
予防策
要件定義書を必ず作成し、以下の項目を明確化します:
■ サイトの目的と目標
- 何を達成したいか(売上向上、問い合わせ増加など)
- 具体的な数値目標があれば記載
■ 必要な機能一覧
- 必須機能と希望機能を分けて記載
- 各機能の詳細な仕様
■ 対象ユーザー
- メインターゲットの属性
- 想定される利用シーン
当社では現在、要件定義に最低2週間をかけ、クライアントと詳細な打ち合わせを重ねています。
パターン2:コミュニケーション不足による認識のズレ
「おしゃれなコーポレートサイトを作りたい」という依頼で、デザインを進めたケースです。
何が起こったか
- クライアントの「おしゃれ」は「高級感のある落ち着いたデザイン」
- 制作側の「おしゃれ」は「モダンで洗練されたデザイン」
- デザイン完成後に「イメージと違う」と全面的な修正が発生
予防策
ビジュアル化による認識合わせを徹底しています:
- 参考サイトの共有:「こういうイメージ」を具体的なサイトで示してもらう
- ムードボードの作成:色合い、雰囲気、テイストを視覚的に確認
- ワイヤーフレームでの確認:レイアウトを先に決めてからデザインに着手
コミュニケーションツールも工夫しており、SlackやChatworkで日々の進捗を共有し、認識のズレが生じた瞬間に修正できる体制を作っています。
パターン3:技術選定の失敗
スタートアップ企業から「将来的に大きくスケールするサイトを作りたい」という依頼がありました。
何が起こったか
- 最初からNext.jsで高機能なサイトを構築
- 開発に時間がかかりすぎて、ビジネスタイミングを逃す
- 結果的に小規模なWordPressサイトで十分だった
予防策
現在は段階的な技術選定を提案しています:
// フェーズ1:WordPress + カスタムテーマで迅速にローンチ
function custom_post_types() {
register_post_type('products', [
'public' => true,
'supports' => ['title', 'editor', 'thumbnail'],
'show_in_rest' => true
]);
}
// フェーズ2:必要に応じてLaravelでAPI化
// フェーズ3:フロントエンドをNext.jsで再構築
技術選定の判断基準
- 予算と納期のバランス
- クライアントの運用体制
- 将来的な拡張性の必要度
パターン4:テストとレビューの軽視
ある企業のWebアプリケーション開発で、納期を優先してテスト工程を短縮したことがありました。
何が起こったか
- ローンチ直後にバグが多発
- ユーザーからの苦情対応に追われる
- 結果的に修正作業で納期以上の時間を要した
予防策
現在は以下のテストプロセスを必須としています:
// 自動テストの例(Next.js)
import { render, screen } from '@testing-library/react'
import ContactForm from '../components/ContactForm'
test('必須項目が未入力の場合エラーメッセージが表示される', () => {
render(<ContactForm />)
const submitButton = screen.getByText('送信')
submitButton.click()
expect(screen.getByText('お名前は必須です')).toBeInTheDocument()
})
- 段階的なリリース:ステージング環境でのテスト → 限定公開 → 本格稼働
- クロスブラウザテスト:主要ブラウザでの動作確認
- レスポンシブテスト:様々なデバイスでの表示確認
パターン5:運用・保守の計画不足
サイト完成後の運用について十分に話し合わずに納品したケースです。
何が起こったか
- クライアントが更新方法を理解できない
- セキュリティアップデートが放置される
- 結果的にサイトの価値が低下
予防策
運用フェーズまで考慮した提案を行っています:
- 操作マニュアルの作成:画面キャプチャ付きの詳細な手順書
- 操作研修の実施:実際にクライアント担当者に操作してもらう
- 保守契約の提案:定期的なアップデートとバックアップ
炎上を防ぐ3つの鉄則
鉄則1:「小さく始めて、大きく育てる」
完璧を求めすぎず、まず最小限の機能でローンチし、運用しながら改善していく方針を推奨しています。
鉄則2:「透明性の高いコミュニケーション」
進捗状況、課題、リスクをクライアントと常に共有し、隠し事をしない関係性を構築します。
鉄則3:「技術よりもビジネス価値を優先」
最新技術にこだわるより、クライアントのビジネス目標達成を最優先に技術選定を行います。
よくある失敗:制作会社選びのミス
炎上の原因は制作会社選びの段階から始まっています。
避けるべき制作会社の特徴
- 見積もりが異常に安い(後から追加費用が発生する可能性大)
- 要件定義をしっかりやらない
- 過去の実績を具体的に説明できない
- レスポンスが遅い
良い制作会社の見分け方
- 質問に対して具体的で分かりやすい回答をしてくれる
- リスクや注意点についても正直に説明してくれる
- 過去の失敗事例とその対策を教えてくれる
まず何をすべきか?
Web制作プロジェクトを成功させるために、まず以下のステップから始めてください:
- プロジェクトの目的を明確化:何のためのサイトなのか、数値目標も含めて整理する
- 予算と納期の現実的な設定:余裕を持ったスケジューリング
- 制作会社との綿密な打ち合わせ:要件定義に時間をかける
- 段階的リリースの検討:完璧を求めすぎず、改善前提で進める
20年の経験上、最も重要なのは制作会社とクライアントの信頼関係です。技術的な問題は解決できますが、信頼関係が崩れたプロジェクトの修復は非常に困難です。
Web制作プロジェクトでお悩みの方、過去に炎上経験がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。失敗を繰り返さないためのプロジェクト設計から、一緒に考えさせていただきます。